ハルマゲドンのいま ... 福島と大飯


福島の真実


 日本は先進国の中で最も危機管理が脆弱な国の1つだ。しかし、 今までの惨事は、人災であれ天災であれ、ほとんどの場合、その影響は国内のみに留まり、危機対応の無能さや愚かさが何度繰り返されても、他の国々の注意を引くことはあまりなかった。

 しかし、福島の危機はすでに日本だけの問題ではなくなっている。日本は“放射能による死”というパートナーとワルツを踊っているが、力尽きてダンスフロアに倒れる時には、そのパートナーである放射能があらゆる方向へ襲いかかり、見物人や傍観者の間を縫って無差別に殺戮するだろう。


 最悪の場合、福島第1原発は放射能火山となり、高レベル放射能を大気中、地上、海上へと放出し続けることになる。風向によっては、北米の80%は全生命が絶滅する。あるいは中国とロシアが絶滅する。日本、そして隣国である韓国などは、あらゆる生物が死を迎え——ゴキブリは生き残るかもしれないが——全土が死体の山となるだろう。

 確実に予測できることが1つある。想像を超える強力な大地震が次に起こった場合——そう遠からぬ未来に起こる可能性があるが——、その地震によって福島第1原発4号機の原子炉は損壊し、まだ除去されていない燃料棒は地下に落ちてメルトダウンが進行し、来る数千年の間放射能を放出する活火山となる。 毎秒爆発し、死の放射能を大気中へ吹き出すこの火山を止めることは、地球上の誰にもできない。これに比べれば、チェルノブイリは無害な爆竹くらいに見えるだろう。

 世界が知らないこと——あるいは知りたくないこと——は、世界を脅かすこのメルトダウンに対処する「責任者」が、何をなすべきかまったくわかっていないことだ! 信じがたいかもしれないが、これが過酷な真実だ。本稿を読み進めればあなたにもわかるだろう。

 すべてを理解する鍵は、何か「世界の終わり」を予言することでも、仲間内だけが知りうる謎めいた秘密でもない。その鍵は、既存のある集団についての確かな事実だ。その集団の名前は「原子力村」(この名前はドイツの公共放送ARDグループによるインタビューの中で、 菅直人前首相が公に言及した)。非常に強力なロビー団体で、社会におけるすべての階層にメンバーがおり、政治、行政から、経済、司法、科学、メディア、芸能・スポーツ界に至るまで、最も影響力のある地位を占めている。この集団が影の実力者であり、この国の運命を万事、細部にわたって決定づけている。

 そう、この集団こそが、世界が今まで知らなかった、権力と利益に最も執着した人種、“モンスター”だ(怪物がいくら邪悪だといっても、この比喩は彼らにさえ失礼かもしれない)。原子力村のモンスターたちに比べれば、マフィアやメキシコの麻薬カルテルは聖人のようだ。地球上のすべての悪党たちを集めても、このモンスターたちの冷酷かつ効率的なやり方には及ばない。今、彼らは日本人全員を手中に収め、窒息死寸前の状態に陥れている。だから、日本国民が何か変化を起こすなどと期待してはいけない。


 日本国民は原子力村のモンスターたちに集団自殺を迫られている。日本の外にいるあなたはどうだろうか? 今私たちが直面しているハルマゲドンは、「世界の終わり」についてのあらゆる予言を組み合わせたような強力なものだ。これを止める唯一の方法は、原子力村に対して外から圧力をかけることしかない。

 中国人のみなさん、立ち上がりましょう! 風向によっては、大飯から放射性降下物が飛んできて、命を脅かすことになるのですから。

 韓国人のみなさん、行動しましょう! 風向によっては、あなたの国は放射能灰になるのですから。大飯原発は、将来的には福島より地震被害に遭う可能性が高く(破砕帯という軟弱な断層の上に建設されたためだ)、基本的な安全構造を欠き、福島よりはるかに安全性が低い。もしこの原発が次の地震で被害を受けた場合、韓国のみなさん、あなたがたはすぐに大量の放射能灰になりますよ!


 世界中のみなさん、傍観者でいることをやめましょう! 風向によっては、次はあなたの番となります。地球の人口問題に対する日本の解決策、すなわち集団自殺を行って可能な限り多くの人を道連れにすることを支持するのでなければ、行動しましょう!


 世界中のハッカーのみなさん、団結して原子力村のモンスターたちを木っ端みじんに吹き飛ばしましょう!

  日本という船が沈んでいく時、原子力村のモンスターたちは自分たち専用の飛行機で逃げるだろう。覚えておいてほしい。福島の惨事が発生した2日後、東京電力は全従業員を撤退させる許可を政府に要請した。残りの日本国民、そして世界を見捨ててである。これが事実なのだ!


 最近(2012年6月)になって、原子力村のモンスターたちはこの事実をなかったことにしようとしている。これこそが、人類最悪の危機に対応している「責任者」たちの、現在にいたるまでの態度だ。プランAだのBだのCだのがあるとは1秒たりとも思わないでほしい。強欲、権力争い、完ぺきなまでの無能さ、そして多くの嘘——それがあなたと死の間にあるすべてだ。

 私は日本に25年間住んでいる。その私がなぜ、今私たちがファイナル・カウントダウンに向かっていると思うのか——引き続き読み進めてほしい。


真実——日本方式 あるいは、より正確に言うと、原子力村の方式
 日本において真実がどのようにねじ曲げられるかにはいくつかの方法がある。しかし、その詳細をみていく前に、知っておかなければならないことは、ほとんどすべての主流メディアが原子力村の支配下にあることだ。その結果、“自由な報道”というものはほとんどない。例えば朝日新聞のように少しは存在するが、容易に口を封じられ、主流メディアに中傷される。

 メディアにおける方針決定はすべて、原子力村という黒幕が資金援助や寄付の形で、あるいは逆に資金源を断つことによってなされる。これが、あらゆること、あらゆる人を操る、彼らの常套手段だ。科学者が原子力村の見解に反することを公表しようとすれば、研究資金は断たれ、研究結果は日の目を見ず、雇用すら失うだろう。


 それ故に、日本の主流メディアに自由はない。一概に自由な報道というものはなく、その反対に、放送局であれ、テレビ局であれ、新聞社であれ、メディアは原子力村による厳格な検閲下にある。

 一方で日本は民主主義であることを装わなければならない。そのため、メディアにはごく小さな自由が許されている。もっともアリバイ程度にしかならないのだが。それは次のような方法だ。


1) 日本において、真実が完全に抑圧されることはない。しかし、

a) 90%は報道されるものの、重要な10%には言及されない。

あるいは、

b) 99%は報道されるものの、本当に重要な1%については、可能性がはっきりせず、あまりにも現実離れしているように見えるために触れる価値がないと“信じられる”。

例:福島の惨事において、東京電力はその初日から4号機原子炉にひびが入り、冷却水が漏れ、メルトダウンが始まっていることを確信していた。この規模の地震に耐えるために必要な安全構造(コンクリートによる強化、保護コンクリートシェルの十分な強度保持など)を発電所に導入してこなかったので、彼らは知っていたのだ。そのことは、2日目、超高レベルの放射能から逃れるため、スタッフ全員を被災発電所から撤退させる許可を政府に求めたとき、彼らは間接的にではあるが公に認めたことになる。

 それでも東京電力は、メディアから原子炉内でメルトダウンが始まっているかと質問を受け、ありえないと信じていると語った。当時、メディアは発電所周辺を24時間大々的に取材報道していた。

2) 真実は巧みにねじ曲げられ、(原子力村のモンスターたちにとって)“都合のよい”形に変えられる。

例:福島の惨事では 、東京電力は当初から、緊急冷却装置のポンプが津波に流されて機能していないことにメディアの注意を引きつけていた。そしてこの“事実”が何度も引き合いに出されるにつれて、これが“事故”(犯罪的過失によりあらかじめ仕組まれたことを事故と呼べるのか、は論理的思考の範疇ではない)の主な、さらには唯一の原因となっていった。

 もちろん、これは事実ではなく、いかに嘘が真実として作り上げられるかを示すショーだ。津波がポンプを破壊したのは事実だが、それだけがこの惨事の唯一の原因でもなければ、ましてや主たる原因でもない。

 しかし、すべてはポンプ損失が原因と主張され続け、数カ月後、実は地震によって原子炉の保護シェルにひびが入ったことを東京電力が認めざるを得なかったとき、この“真実”は原子力村に支配されたメディアのお蔭でごく小さく扱われ——かろうじて言及された、といったところだ——、人々にとっては、あまりにも遅きに失した情報となった。これは次に挙げる、真実を扱うもう1つの方法だ。

3) 真実は切断され、そのかけらはかなり後になってから公表されるので、その頃には人々は何かをするには遅すぎると感じるに至る。

 現在に至るまで、日本と世界のほとんどの人たちは、東京電力の説明を信じている。そのお蔭で東京電力は、すべて想定外の津波(これもすぐ後出するが大きな嘘である)のせいにして逃げ切った。“事故”の6カ月後、調査委員会は東京電力を全責任から免除した。原子力村の専門家が集められた“独立した”委員会が出した、言わずもがなの結果であった。


世界の信用とモンスターたち

 今、一番あってはいけないことは、世界が日本の政治家を信じることだ。これほど間違った相手に世界が信用を置くことは今までなかった。このまま情け深く目をつぶり続ければ、大変な代償を払うことになるだろう。

例:2012年4月14日、枝野幸男経産相が大飯原発再稼働の説明のため、福井入りする。当初、枝野経産相は再稼働に反対の立場を表明していた。その前には、関西電力による市民投票封じや安全報告書の改ざん、安全構造の欠如などさまざまなスキャンダルが報道されており、この非常に危険な発電所を再稼働しないための理由は大量にあったし、今も存在している。


 しかし、彼は明らかに原子力村のモンスターたちから何らかの話を受けたと思われる。反対発言から数日後には180度方向転換し、ノーからイエスに意見を変え、再稼働反対の人々の側にいた彼が、再稼働を“説得”するために地元を訪れることとなったのだ。

 このようにして、軟弱な断層(破砕帯)の上に立つ、完全に危険な原発の再稼働が、次の福島となる可能性を示すあらゆる証拠に反して決定された(3号機は7月9日、4号機は7月25日にフル稼働を開始)。

 今のところ、世界の日本に対する信用は、日本の責任者たちが自国民を犠牲にすることはないという前提に基づいている。これほど真実からかけ離れているものはない! 原子力村は彼らの金銭的利害に関わるなら、何の躊躇もなく、すべての男女子どもを犠牲にするだろう。今までにもそうしてきているのだ!


 福島についての事実をいくつか知ってもらいたい。

1) 1960年代、原発建設に対する地元住民の抵抗は、激しくはあったが民主的であり、平和的なデモや署名運動などによるものだった。しかし彼らの試みは、「原発は安全」という嘘によって組織的に弱体化され、人々は買収されたり脅迫されたりした。会合、調査、市民投票は封じられ、結果はねつ造され、最終的には政府は人々の意志を押しつぶした。

2) 東京電力は建設計画の安全性審査を受けた後で当初案を変更した。当初案では標高30mの場所に原発を建設することを要請していたが、東京電力は標高10mまで掘り下げて建設した。理由は、海から発電所まで冷却水を揚水するコストを下げるためだ。もし原発が当初案通り標高30mに建てられていたなら、3月11日に緊急冷却装置が流されることはなかっただろう。東京電力は発電所周辺住民の命の危険をわざわざ意図的に冒したのだ。

3) 現在に至るまで、東京電力はあれほど高い津波が同地域を襲うことは想定外だったと主張している。東京電力が被害調査を最初に発表したとき、津波の高さは約15mであったとされた。しかし歴史を振り返れば、この地域は大きな津波に2回襲われている。1つは1896年、38.2m(11階建てビルの高さである!)の津波が宮城県北部(今回も津波被害があった)を襲い、22,000名の命を奪った。もう1つはそのたった37年後、28.7mの津波が同地域を襲い、“わずか”1,552名の命を奪ったのだ。これらの津波の後に、周辺地域での同程度の津波が予測不可能だったというのか? 代わりに東京電力が建設した防潮堤は高さ5m(!!!)で、それを政府が認可したのだ。東京電力は地元住民の命を、罪の意識なくわざわざ意図的に危険にさらしたのだ。

4) 東京電力は安全・安心に関わる問題、故障、修理を日常的に隠蔽し、それらの報告書をねつ造していた。前福島県知事が東京電力の報告書を疑問視した際、東京電力は暴力団を雇って知事とその家族、友人を脅迫し、最終的に彼を辞任に追いやった。東京電力のやり方に疑問を呈する者はみな、このように口を封じられるのだ。東京電力はわざわざ意図的に……。

5) 現在に至るまで、東京電力は、“想定外の”津波が直後の災害の原因だというふりをしている。それは見え透いた嘘である! 真実は、地震によって原子炉にひびが入り、そのためメルトダウンが生じたのである。東京電力は安全規定に則って原発を建設しなかったという事実を隠したいのだ。責任を取りたくないからである。東京電力はわざわざ意図的に……。

 公平を期すために言っておくと、非難されるべきは東京電力だけではない。これらの犯罪に関わったり逃れたりすることを自由にできる電力会社はない。言うまでもなく、東京電力は原子力村のモンスターたちに経営されているのだ。

 ここまでで十分にひどいと思うかもしれない。だが、ことはこれだけではないのだ。



残忍な悪

 3月11日の災害によって、福島第1原発周辺の24カ所に設置されていた放射線測定器のうち23カ所が損壊し、東京電力は被災した福島原発から放出される放射線の状況を監視、評価する方法を事実上失った。

 3月17日、米国エネルギー省は米軍機を福島に送り、原発から半径45km圏内の放射線量を測定し、在日米大使館経由で外務省に提出。データは経済産業省原子力安全・保安院と文科省に転送された。このデータに基づいてアクションが取られれば、何千という住民、特に子どもたちが、甲状腺がんの原因となる放射性ヨウ素にさらされ続ける代わりに、安全な場所へ避難することができただろう。

 しかし、何もなされなかった。この重要な情報が保安院や文科省から先に伝えられなかったのだ。米軍機は18、19日にも測定し、収集したデータは20日に再度日本側に提出された。ここでも何かがなされることはなかった。とうとう3月23日には米国エネルギー省が全データを米国内で発表したが、文科省は国内での公表を差し止めた。

 このように、これらのデータは日本では公表されず、1年以上経ってから明らかになった。すると、原子力村モンスターの忠実な部下である文科省は、当時データを公表できなかったのは、実証できなかったからだと嘯いた(実証できなかったのは当たり前だ。測定器がすべて止まっていたのだから。実証できようができまいが関係なかった。世界は何が起こっているか知っていたし、収集されたデータは偽りのないものだったのだから)。

 真実は、彼らが単にデータを公表したくなかったという醜いものだ。被害を軽く見せなければならなかった。なぜなら、責任ある立場の人たちがいかに怠慢であったか、それが信じられないほど犯罪的で、そのために“事故”があらかじめ組み込まれ、いかに危機対策ができていなかったか、彼らがいかに無能で危機に対応できなかったか——これらを認めたくなかったのだ。都合の良いスケープゴートが見つかるまで(最近放映された番組では、菅前首相が原子力村のモンスターたちによってスケープゴートに仕立て上げられたとしている)、何千という子どもたちの未来ある命を犠牲にしても、心が痛むこともなく。

 何千という子どもたちの健康と命は、 原子力村のモンスターたちによって意図的かつ意識的に危険に曝されたのだ。今やあなたもわかるはずだ。彼らがいかに残忍な悪であるかが。





人々の意思——日本式デモクラシー

 2012年3〜4月、大飯原発の再稼働を検討していた野田佳彦首相は、再稼働には地元の同意が必要と訴え続けた。大飯原発は軟弱な断層(破砕帯)の上にあり、基本的な安全構造にも欠け、そのため、福島よりはるかに危険である。


 福井県と周辺の住民が意見を求められた。原発が閉鎖されることによって職を失う直接的影響を受ける少人数を除いて、文字通り誰もが再稼働に反対を表明した。明らかに圧倒的多数が、ノーと言ったのだ。


 5月、野田首相は突然、直接影響を受ける人たちの多数意見だけを考慮すると発表した。原子力村モンスターの支部である関西電力によって買収されたり脅迫されたりした人たちがほとんど、という少人数の意見だけというわけだ。このようにして、大飯原発の再稼働は真に独裁的なやり方で命じられた。

 こうして千人程度の“大多数”の人たちが、数百万人という“少数”の人たちに意見を押し付けた。日本ではこのような“大多数” “少数”といった言葉は何ら民主的な意味をなさない。何が多数で何が少数であれ、最終的に決定するのは原子力村モンスターの“ボス”——あるいは傀儡——なのだ。

 日本には2つの大きな社会的行動規範がある。本音と建前だ。その意味を他の言語で説明しようとすると、解釈が多数出てくるだろうが、簡単に言えば、建前はうわべ、すなわち背後に何があるかを注意深く隠しながら表に見せるもので、本音は正直さ、本当の物事、本当の感情、本当の意見や考えのことであり、建前の後ろに隠すべきものである。

 日本における民主主義は建前である。それによって世界政治に参加し、自国民に日本が民主国家であると信じさせている、外向けのショーだ。しかし、日本は原子力村モンスターという原子力推進団体によって統治されている、それが本音、すなわち真実だ。




 原発再稼働に反対であった、あるいは今反対である人たちを裏切るプロセスが、現在真っ盛りだ。福島のひどい“事故”と今も続く脅威にもかかわらず——危機管理といったものがないので——、国内にある他の原発のほとんどが安全性に重大な問題があり、3.11レベルの地震に対して安全と言える原発が事実上1つもないにもかかわらず、人口の大多数が脱原発を求めているにもかかわらず——それらすべての存在にもかかわらず、原子力村モンスターたちはこれらの原発を再稼働しようとしている。

——ああ、世界が破滅する前夜だなんて、君は信じない。(「明日なき世界」バリー・マクガイア、1965年)

 いや、まさに前夜だ!


追記:日本人が好まないことは面目を失うこと。世界の前ではなおさらだ。

 だから、世界のみなさん、あなた方次第なのだ。原子力村モンスターたちにふさわしい評判を広めよう。どんな方法でもいい。今世界は、世界を破壊しようとしているモンスターの存在に直面していることを、毎日インターネットを利用するすべての人の脳に叩き込もう。動画、ショー、抗議の歌、イラスト、テキスト——必要な手段をすべて使って、 原子力村がハルマゲドンのボタンを今まさに押そうとしていることを、世界(とあなたの国の政府)に伝えよう。